- 看護師としてもっとキャリアアップしたい
- ずっと同じ職場で働いているけど、もっと良いところないかな
- 残業多くて夜勤もつらいし、委員会活動などの負担からも逃れたい…
- 育児のため家庭優先で働きたい
看護師として勤務するうえで、このようなことを思うことも多いと思います。
一つの職場に長く勤務すると、なかなか辞めにくかったり、慣れている仕事内容、同僚から離れることにも勇気がいるのではないでしょうか。
私は看護師歴28年で、これまで大学病院からクリニック、介護施設まで7回の転職をしてきました。
実際、長くなればなるほど辞めることが大変だし面倒だと思うときもありました。それでも、様々な職場を経験したことが看護師としての成長につながったと思っています。
この記事では職場ごとに、どんなメリットとデメリットがあるのか、実際私が体験し感じたことも含めてお伝えしていきます。
職場を変える際は良い条件ばかりに目を向けがちですが、デメリットも含めて自分の現在のライフスタイルに合った働き方を見つけることが重要です。
看護師の働く場所の選択肢は?
看護師の働く場所は非常に多岐にわたり、それぞれ異なる特徴と魅力をもっています。
代表的な働く場所とその概要を説明します。
病院
20人以上が入院できる医療施設
診療科、病床数によって規模、業務内容がことなる
看護師がもっとも多く働く場所
クリニック
19人以下が入院できるか、または入院施設を持たない地域に密着した小規模な医療施設
医院、診療所と呼ばれるものも含まれる
患者との距離が近い
介護施設
高齢者を対象とした介護、医療サービスを提供する施設
特別養護老人ホーム、老人保健施設、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などがある
看護とともに介護業務をおこなうことが多い
訪問看護ステーション
利用者の自宅を訪問し医療処置、生活支援をおこなう
障害者支援施設
障害者の入所を受け入れ日常生活の世話、介護を提供する
企業
一般企業に勤務し社員の健康管理、保健指導をおこなう
病院勤務は過酷だが、やりがいがありスキルアップできる

病院勤務といっても大学病院から一般病院まで、規模の違いはあります。総合的に診療する病院と、専門性に特化した病院との違いもありますが、いずれにしても医療の現場であることは同じです。
そのため患者の命を守るという、やりがいがある一方で過酷な労働環境、ストレスを伴うことが考えられます。
- 専門知識を得られ、スキルアップにつながる
- やりがいを感じることができる
- 安定した収入を得られる
病院では日々医療の最新情報に触れ、新しい知識、技術を習得することができ、スキルを向上させることができます。特に大学病院や専門病院で働くと、専門分野についての知識、経験が身につくため、その後に同じ診療科で転職する際は有利です。実際、履歴書に記載すると優遇されることも多かったりします。

専門に特化した認定看護師などの道もありますね。
また、他の専門職と連携しながらチームで働くため、看護だけでなく介護やリハビリなど、いろいろな角度から学ぶことができ、視野が広がります。
直接的に人々の健康、命に関わる仕事であり、患者の治療、ケアを通じて大きなやりがいを感じられます。患者が治療を終え、退院していくときはやってて良かったと思える瞬間です。
そして、需要が高く、雇用が安定しているため収入面での安心感があります。また、病院によっては福利厚生や待遇にも恵まれています。
- 過酷な労働環境である
- 精神的なストレスが大きい
- プライベートとのバランスの難しさ
病院勤務の多くは夜勤があり、不規則な勤務や長時間の勤務を求められるため、過酷であり身体的に負担がかかります。私は2交代勤務と3交代勤務両方を経験しましたが、どちらも異なる大変さはありました。自分の生活リズムや環境に合っているかを見極める必要もあるでしょう。

2交代勤務の夜勤専従で働いていた同僚は、通勤時間が長いため日勤が多いことが苦痛と言ってました。
また、患者の急変や命に関わる事態に直面しているため、常に緊張感が求められ、勤務が終了する瞬間まで気が抜けません。何事も起こらず終わった日は本当にうれしいです。
予定のある日に限って急変があったりしますが。
終末期、難病患者も多く、患者、家族の悲しみに触れることで精神的なストレスを感じることがあります。
不規則な勤務時間で、休みの日でも委員会や会議があったり、家庭やプライベートとのバランスをとることが難しくなります。育児や家族介護が必要なときは、両立が難しいかもしれません。
女性が多い職業のため結婚、出産で退職する方も多いのではないでしょうか。私もそのタイミングで大学病院を辞めました。
クリニック勤務は規則的な生活が可能、しかし急な休みが取りにくいところも

クリニックは病院より規模が小さく患者の人数も少なくなります。また所有する医療設備の違いもあり、提供する医療の幅は限られてきます。
病院よりもゆったりとした環境で働ける半面、スキル習得や職員数の違いからくる業務負担も考えられるでしょう。
- 比較的規則的な勤務時間である
- 患者との密接な関わりがもてる
- ストレスの少ない環境
クリニックの大きなメリットは病院に比べ勤務時間が規則的なところにあると言えます。
診療時間が決まっており、夜勤や長時間勤務が少ないため、生活リズムを保ちやすいです。
また週末、祝日に休みを取れることも多く、プライベートと仕事のバランスはとりやすいでしょう。

午前、午後の診療時間が決まっているため休憩時間2時間あったりします。私は昼休み家に帰っていました。
患者数が少なく地域性もあるため、一人ひとりとじっくり向き合うことができます。
ご家族で3世代にわたり通院している方もいました。
そのためより細かな観察が可能で、長期的な関係を築くことができると言えます。
病院に比べて急変や重篤な症状に直面する機会は減り、精神的緊張やストレスが少なくなります。
小規模で忙しすぎない働き方が可能になるでしょう。
- 収入面での低さ
- スキルアップが限られる
- 職員数が少なく、業務内容が多岐にわたることがある
クリニック勤務の給与水準は、夜勤もないことが多く病院に比べて低めであると言えます。
専門的な治療や高度な医療技術を経験する機会が少なくなるため、スキルアップは限られてきます。
しかし採血することは多くなるため、血管穿刺の技術はあがります。逆にいうと採血が苦手だとクリニック勤務は厳しいと思いました。
職員数が少ないため、看護師が受付や事務などの役割をしたり多岐にわたる場合があります。
また、急な勤務変更に対する対応が難しい場合もあり、少人数で業務を回すことが負担に思うこともあるかもしれません。子どもの体調不良などで急な休みが多くなってしまうときは、職員数が多い病院のほうが良い場合もあると思います。
介護施設勤務は穏やかな働き方を実現できるが、知識と経験が必要

介護施設のなかには、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、ケアハウスのほか、ショートステイやデイサービスなどもあります。
介護施設では、安定した働き方や利用者との深い関わりを求めるには適した職場ですが、医療スキルを維持したい場合や高収入を求める場合は検討が必要です。
- 働きやすい環境
- じっくり利用者と関わることができる
- 穏やかなペースでライフワークバランスがとりやすい
介護施設勤務は医療を提供する病院と比べ、急変対応が少ないため残業も少ないと言えます。
施設によっては看護師の夜勤がないところも多いため、働きやすい職場環境になります。
レクリエーションも多く、看護師も参加したり楽しいことも多いと思いました。
長期的に利用者と関わるため信頼関係を築きやすく、身体的、精神的サポートをおこなうことができます。
同じ利用者と長く接しているため変化に気づくこともできますし、看護師よりも利用者に近い介護士から報告を受けることも多々ありました。
落ち着いた環境でゆっくりと仕事に取り組めて、定時で帰れるためプライベートと両立しやすいでしょう。
- スキルの維持が難しい
- 看護以外の業務もあり、身体的負担になることもある
- 緊急時の対応、オンコールが求められることがある
介護施設では急性期医療や高度な処置にたずさわる機会が少ないため、スキルが鈍る可能性があります。点滴や採血もおこなわない施設も多く、もう刺せない…となってしまうかも。
生活の場である施設のため、入浴や移乗介助などの介護作業が多くなります。身体的な作業が多いと、腰痛など引き起こし負担に感じる場合もあります。
医師がいない環境での急変時は的確な判断と対応を求められます。そのため資格取得後すぐに介護施設で働くことはおススメしません。病院での知識と経験が必要だと考えられるからです。
また介護施設での看取りも多いと思いますが、夜勤がない施設の場合、引き継ぐ介護士にもわかるような体勢、申し送りが重要になってきます。

介護士の力量にもよりますが、どんなタイミングでオンコールして、などかなり細かく伝えていました。
オンコール対応も実際多くはないですが、私の場合は看取りの利用者がいると電話を気にしてしまい、一晩寝た気がしませんでした。(もちろん施設によって違いますし、性格上まったく気にせず寝られる人、あとは慣れもあると思います。)
訪問看護勤務は個々に合ったケアができるが、一人での対応が求められる

訪問看護ステーションでの勤務は、利用者の生活に寄り添ったケアをおこないたい方やプライベートとの両立を求める方に適しています。一方で緊急対応や移動負担がストレスとなる場合もあるため、事前に職場環境や条件をよく確認することが大切です。
- 利用者と密接な関わりを持つことができる
- スキルアップの機会がある
- 自由度の高い働き方ができる
訪問看護では一人ひとりの利用者に合わせたケアを提供でき、生活環境を直接知ることでより適切なケアプランを立てることができます。
病院、クリニック、施設などでは知ることができない生活環境を知ったうえで看護できることは大きな強みであると言えるでしょう。

入院中にどれほど生活指導しても退院したあとはまったく役にたたない…なんてことも多いと思います。
医療処置から生活支援まで幅広いスキルを活用し、利用者のニーズに応じた臨機応変な判断力が磨かれていきます。
決められた訪問スケジュールに従って自分のペースで仕事を進められます。また、夜勤がほぼないためライフワークバランスが取りやすい生活になるでしょう。
- 緊急対応や移動の負担がある
- 医療設備の制限を感じることがある
- 孤独感やストレスを感じることがある
利用者さんの急変時にオンコールで駆けつけることがあり、精神的負担がかかる場合があると思われます。また、車の運転や移動時間、悪天候時の訪問などの理由でも負担に感じるかもしれません。
訪問先は医療設備のない場所であるため簡易的な器具での対応になります。そのため医療的な処置に制限があり、病院と比べてスキルの幅が狭くなってしまうこともあります。
基本一人での訪問になるため同僚との情報共有やサポートが難しいときがあります。
また、利用者やご家族からの要望によっては精神的負担に感じることもあると思われます。
患者、利用者を対象としたあらゆるところにも共通することですが、無茶な要望を言ってくる方は残念ながらいます。そんな現場で一人で対応することはかなりの精神的ストレスを感じてしまいますね。
障害者支援施設で働く看護師

障害者支援施設の利用対象者は、知的障害や身体障害により介護、援助を要し、自宅での生活も難しい方になります。
生活介護や自立訓練、就労支援などのサービスがありますが、軽度~重度と障害の程度に応じて支援する内容も違ってきます。軽度であれば日中は作業したり就労されている方もいるわけです。
基本的に健康管理と生活支援が主な看護業務で、医療処置は少ないため医療面でのスキルアップは難しいでしょう。
しかし、利用者との関わりのなかで、病気とは異なる障害ついての知識を得ることができます。
生活の場でゆったりとコミュニケーションをとっていくことが合う人にとってはやりがいも感じられると思います。
企業で働く看護師

一般企業で働く企業(産業)看護師は企業で働く人の医療的、看護的サポートをおこないます。
社員の健康診断の実施や健康相談、保健指導などをおこない、日勤のみで規則的な働き方ができます。
直接医療行為と関わらないため精神的に楽な反面、自分ひとりで判断を求められるときもあると思います。医療施設での知識と経験が、ある程度必要になってくるでしょう。
看護師の人数配置が少ないため、自分のペースで働きたい人にも良いと思われます。
「どこで働くべき?」を選ぶポイント

看護師として働く場所を選ぶ際は、希望する働き方やキャリアプラン、勤務条件などを考慮するようにしましょう。
- どんな看護師になりたいか
- 自分のやりたい看護、目指す看護ができるか
- どんな働き方をしたいか(夜勤の有無、勤務体制)
- 将来の目標(役職、資格取得など)を明確にする
- 給与や賞与、手当の種類、金額を比較する
- 勤務地や通勤、環境を考慮する
- 就業体験、説明会で人間関係や雰囲気をつかむ
あなたに合う職場をみつけよう

看護師の働く場所は多岐にわたり、それぞれメリット、デメリットがあります。
自分の経験やスキル、性格、ライフスタイルを考慮したうえで、もっとも譲れない条件やポイントを決めて探すことが重要です。
同じ規模の病院、施設であっても働いてみると業務内容もルールもまったく違います。実際に働いてみないとわからない部分が多く、ある意味転職はひとつの『賭け』だな、と思いながら私も転職を繰り返してきました。
特に女性はライフスタイルの変化を伴うことがあるため、以前は合わないと思った職場でも後に働いてみると、そのときの自分に合っていた、なんてこともあると思います。
今の職場が少しでも不満に思えたり、次のステップに進みたいと感じた際は、視野を広げて働く場所を考え直してみるのもひとつの手かもしれません。
職場は、一日の大半を過ごす場所です。
今より少しでも、自分が納得してストレスなく働けるよう選択することが大切です。