看護師が介護施設で働くって実際どう? 業務内容と病院勤務とのちがい

介護施設で働く
  • 介護施設って色々あるけど、ちがいはなに?
  • 業務内容は? 実際はどんな感じなの?
  • やりがいとかなさそうだけど、本当はどう?

医療の現場で疲れ、次は介護施設でのんびり働いてみたいけどなかなか動き出すことができない、そんな人も多いのではないでしょうか。

私も同じような疑問をもったまま、時間だけが過ぎてしまっている時期がありました。

この記事では、看護師歴28年で7回の転職経験をした私が、介護施設で働いてみて実際おこなった業務感じたことを書いています。

介護施設勤務は、大変な面もありますが医療の忙しさ、あわただしさからは解放され、ライフワークバランスは保ちやすくなります。また、病院勤務の時とはちがった考え方を持つことができ、介護施設ならではのやりがいも感じることができると思っています。

病院と介護施設の対象者と看護師の役割の違い

介護施設の種類と特徴

特別養護老人ホーム

公的施設で費用が安いため人気がある施設、待機者も多いです。原則要介護3以上の方が生活全般の介護を必要として入所され、終身利用ができます。そのため看取りもありますが、看護師は基本夜勤はなく、オンコール体制になります。

介護老人保健施設

公的施設で要介護1以上の方が入所でき、在宅復帰に向けての医療ケアやリハビリに重点を置いている施設です。原則3~6カ月間で、医師が常駐し看護師24時間体制のため夜勤があります。 

介護医療院

公的施設で2018年に法定化され医療、介護両方を提供する、医療機関に近い職員配置をとった施設です。要介護1以上の方が入所され、医療ケアからリハビリの実施、看取りにも対応しています。

有料老人ホーム

民間施設で高価格帯のところだと高い接遇が必要とされることもあり、要支援でも入所可能です。介護付き、住宅型、健康型があり、介護付きには看護師が常駐、夜勤かオンコール体制になっています。

サービス付き高齢者住宅

民間の賃貸住宅で一般型、介護型があります。施設によって自立度も異なったり、訪問看護業務として関わることもあります。介護型で看護師の常駐があり、有料老人ホームと同等の介護、看護サービスを提供することになります。

グループホーム

認知症があり要支援2以上の方が共同生活を送るための施設です。看護師配置はない場合が多いです。

デイサービス

日帰りで通い介護や機能訓練などを提供するサービスで、家族の負担軽減を目的とした利用もあります。利用者10名に対し看護師1名以上の配置が必要になり、看護業務と兼務で機能訓練員の役割を担うこともあります。

ショートステイ

短期間入所でショートステイ単独型と特養内などの併設型があります。原則は連続30日間ですがロングステイもあり、家族の用事や介護負担軽減のために利用できます。また、近年看取りの需要もあります。

介護施設でおこなう業務内容の実際

看護師がおこなう介護施設内の業務は大きく分けて健康管理、医療業務、介護業務があります。
私はデイサービス、ショートステイ、サービス付き高齢者住宅での勤務を経験し、介護老人保健施設では1日体験をしました。そのなかで、実際におこなった業務を紹介します。

健康管理

  • バイタルサイン測定
  • 身体観察
  • 服薬管理
  • 受診対応
  • 機能訓練

介護施設は毎日のように入浴があります。入浴予定の利用者のバイタルサイン測定を優先し入浴可否の判断したあとに他のかたも測定していきました。多ければ40人近く入所されているため、測定するだけでも時間はそれなりにかかったりします。その際に体調について聴取しますが、認知症のためご自身で体調不良を訴えることができない場合が多いため、全身状態をよく観察することが重要です。


基本的に月に2回程度の往診があり、処方を受けて看護師が管理します。利用者によって開始日が違ったり、臨時の追加処方があったり、往診医とは別の病院での処方もあったりするため管理も大変な作業でした。


デイサービス、ショートステイでは外部の受診に看護師が付き添うことはなく、受診が必要な旨を家族へ連絡して促していました。入所施設では、急な体調変化があり受診が必要な場合や、往診医の他に定期受診している病院があれば付き添いします。


施設によっては、機能訓練指導員の配置が定められていますが、リハビリ専門職がいないところではその業務を看護師が兼務しています。そのため利用者の身体機能の維持、向上に向けて計画、実施、評価をおこなう業務もあります。ただ実際は兼務ということで手が回らず、かたちばかりになってしまうこともありました。

医療行為

  • 経管栄養
  • ストーマ管理
  • 尿道バルーン管理
  • 褥瘡、傷処置
  • 吸引
  • 在宅酸素管理
  • 浣腸、摘便などの排便コントロール
  • 血糖測定、インスリン注射
  • 軟膏、湿布処置
  • 往診医への報告書作成、往診対応
  • 救急搬送判断、付き添い
  • 看取り対応

介護施設は高度な医療処置はおこなわないため、病院では当たり前に準備されている物品、設備がありません。ポータブルの吸引器を使用したり、経管栄養や尿道バルーンの物品も対象者がいたら往診時に請求していました。
ストーマ管理も基本看護師ですが、認知症のため夜間に自分ではがしてしまう方もいて、介護職員ができるよう指導し実施してもらっているところもありました。入浴日など交換する際に皮膚トラブルがないか、よく観察していきます。
褥瘡、傷処置が発生したときは、処置材や薬剤はその場で判断しできる範囲で処置をおこない、必要時往診医の処方を依頼します。


高齢者が多い介護施設は嚥下機能の低下で誤嚥するリスクが高く、吸引、経管栄養の必要性は増加傾向であると言えます。

えむ
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コロナやインフルエンザに罹患したあとも以前の状態に戻らず、食事摂取できない、吸引が必要になった、というケースもかなり多かったです。

夜勤者が介護職員で吸引ができない体制のことが多く、喀痰量や吸引の頻度によっては、受け入れの可否を判断する要素となっていました。


施設の利用者は排便コントロールを要することが多く、服薬でも無理な場合に浣腸、敵便で対処します。


毎月の往診日では集団でおこなうことが多いため、前日に状態の変化や様子を報告書として作成しファックスで送信していました。往診当日にバイタルサインを記載し順番に診察、その際にも口頭で報告し処方を受けます。往診日以外にも何かあったら電話で報告し、必要時来所してもらいます。


状態が悪化して施設内で対応することが難しくなったら看護師判断で救急車を呼び病院へ搬送することになります。家族が遠方のこともあるため、到着するまで付き添いもする必要があります。
病院での入院を望まない場合や、家族がいない方もいるため、状態をみて医師の見解やいろいろな背景から看取りと判断することになります。その際は、介護士にもわかるようなマニュアルや、細かな申し送りが必要になります。

えむ
えむ

私が経験した介護施設ではありませんでしたが、施設によっては採血、点滴もあります。

介護業務

  • 移乗介助
  • 入浴介助
  • トイレ誘導、オムツ交換
  • 口腔ケア

入浴後に軟膏や褥瘡処置の必要があるため、着脱介助は看護師がおこなうところもあります。
介護施設は長時間車いす乗車していることも多いため、臀部の皮膚の観察をするうえでもトイレ誘導、オムツ交換時に介護士と協力してケアしていくことが必要になります。

その他

不随しておこなった業務として

  • 看護記録
  • 介護士への指導、助言
  • 家族への報告、連絡帳記入
  • 感染症予防の対応、啓発、指導

介護施設の記録は病院とちがい非常に簡素です。すべての利用者に毎日記録するわけではなく、特記事項がなければ記録しないことが多くありました。

介護士のなかには、介護すること自体初めてというひともいるため、利用者対応で気を付けてほしいこと、よく観察してほしいことなど指導、助言することも必要になります。もちろん、なかには経験豊富で安心して任せられる介護士もいたりします。

利用者の状態悪化時は受診することも視野に入れながら家族へ報告しますが、施設によっては基本相談員から連絡するところもあります。デイサービスやショートステイでは、自宅へ帰るときに連絡帳へ施設内での様子や気になることなど記入する業務もありました。


施設では、フロアに大勢の利用者が長時間滞在し食事もするため、感染症の蔓延リスクがかなり高い状況です。予防のための対応、指導に加え施設によっては看護師が勉強会をおこなうことろもありました。

介護施設で働いて実感したこと、病院勤務とのちがい

介護施設で働いてみて実感したことは、病院経験は必要だということです。高齢者は様々な疾患を抱え、あらゆる内服薬を飲んでいます。知識と経験がないと利用者の変化に対してどのような原因が考えられるか、という予測もできないと思います。

内服薬管理の大変さも実感しました。病院とはちがい薬剤師はいません。

えむ
えむ

多くの内服薬をまちがいがないか確認し、セットまですべてを少人数の看護師がおこないます。

決まった往診医の処方である場合はまだ扱いやすいですが、デイサービスやショートステイのように自宅からの持参薬では、そもそも退所日まで足りなかったり、処方どおりに内服していないためすべてがバラバラ、といった家庭も本当に多かったです。そのたびに電話して確認したり、再度持参を依頼したりといったことが必要になっていました。

♦看護師の人数が少ないため、ほかの業種との連携が大切になりますが、介護士に指示する大変さも感じました。看護師は看護師にしかできない業務に追われているため、観察してほしいことを常に利用者の近くにいる介護士に指示することも必要なときがあります。しかし、病院勤務のときと同じような感覚でいると、わかってくれず驚くことも多くありました。一般の人に説明するように分かりやすくする必要があります。

♦介護施設は高齢者が多く看取りもありますが、救急搬送も多いということを感じました。

今までの病院勤務で施設から入院してくる患者のなかには、どうしてこんな状態になるまで放っておいたのか、もっと早く入院してくれば、と思うことも多くありました。

しかし実際介護施設で働いてみて利用者の状態変化に気がつかない職員も多かったり、そもそも職員数が足りず観察が十分にできない、と感じることもありました。

えむ
えむ

入院が遅れる要因として、このようなパターンもあります。

デイサービスやショートステイで基本在宅の場合、受診が必要だと判断しても、家族の意向によるため、なかなか動いてくれない家庭も多くありました。そのままの状態で何度も通所するためかなり困ってしまい、ケアマネージャーにも強く働きかけて動いてもらいやっと受診していただく、といったことも実際多かったです。

♦利用者は高齢者が多く、新たな病気が発覚しても治療しない選択をすることが多々あります。たとえ治療できる状態だとしても、家族の意向や様々な背景から治療せず様子みることもありました。最初から治療を望む患者を対象とした病院勤務のときとはちがった考え方をしなければいけないと思います。

介護施設内での看取りは病院とは異なり、自然なかたちで進んでいきます。最初は点滴もしないことに大変驚きましたが、家族や施設職員たちに囲まれて看取りを迎える過程を経験して思うこともありました。

えむ
えむ

かかわる期間が短い病院よりも、長年みてきた職員たちにとって、家族の最後を迎えるようなあたたかい雰囲気があると感じました。

♦病院でも介護施設でも認知症の方を対象とすることが多いですが、治療の必要がある患者とはちがい、生活の場である施設の利用者に対する職員の対応のほうが丁寧だと思います。私も病院勤務のときはあわただしく、ゆったりした気持ちでかかわることができない場面も多くありました。介護施設で働くようになってから気持ちが穏やかになったと思っています。

♦病院勤務より介護施設で働きはじめると、以下のようなことから、利用者のことを考えている時間が多いと感じました。
 

  • 勤務終了後もオンコールで呼ばれる
  • 状態悪化している利用者、看取り対応中の利用者が気になる
  • 看護師同士がすれちがい勤務のため休日も情報共有のためのメールがくる


病院勤務のときは職員数が多いため、勤務が終われば次のシフトに入る看護師に任せることができます。しかし、介護施設では看護師自体が少ないため、自分ひとりに重みがかかってくると思います。そのことにやりがいを感じるか、負担に感じてしまうかは人それぞれだと思います。施設の特徴を理解したうえで、働き方を選別していくことが必要だと感じました。

介護施設看護師は今後も需要あり

現在、超高齢化社会と言われており、どこの地域にも高齢者施設は多くあると思います。私の住んでいる近所でもいたるところに施設があります。その一つ一つに看護師が必要だと考えると、一施設に配置される看護師の人数は少なくても、かなりの数になることが想像できます。

えむ
えむ

病院に入院している高齢者もかなり多いと思っていましたが、それ以上に、治療を望まない、または入院の必要がない高齢者の多さにも驚きました。

 また、平均寿命が伸びているなかで、家族がいない、高齢者の一人暮らし、老老介護の家庭の多さも実感しました。だからこそ老人福祉の必要性はかなり重要になってきていると思います。

ある程度の医療も必要、だけど医療施設も切迫しているため、介護施設へ。
そんなループで看護師のニーズは増えていると感じています。

まとめ、介護施設もやりがいある職場

長い間、医療の現場で働いてきた私ですが、思いきって介護施設に働く場所を変えてみて、病院の忙しさから解放されました。医療現場の緊張感、プレッシャー、後輩看護師や学生の指導、教育もそうです。それらの業務もかなり負担に思っていた私にとって、介護施設勤務を選んだことは結果的に良かったと感じています。

とはいえ、看護師のなかには介護業務はしたくない、という人もいるため、誰でも介護施設をおススメするわけではありません。私は病棟勤務でも介護自体が多かったこともあり、抵抗はまったくありませんでした。そのような人には向いていると思いますし、施設によっては看護業務のみ、というところもあるため希望の条件をはっきりさせておくことが必要になります。 

私が実際働いてみて感じたことは、介護施設は大変さもありますが、やりがいもあるということです。 
ライフワークバランスを重視したい人介護施設での働き方も視野に入れて考えてみてはいかがでしょうか。

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